オニカサゴ属の見分け方。
2024-06-06
オ…オニカサゴ?
どうも、最近カサゴ沼に沈みつつある僕です。
カサゴ、ちゃんと勉強しないと同定できないんですよね。
中でも今回はかなり見分けるのが難しいオニカサゴ属のよく似た7種の見分け方をまとめます。
ちなみに今回まとめる情報は@yuma_sakanaさんに勉強会を開いていただきご教授いただきました。いつも本当にありがとうございます!
ダイバー向けに可能な限り水中写真で得られる情報から同定できるようにしておりますので困ったときはぜひ参照ください。
てかオニカサゴの見分け方で困った時点でもう常人ではないですよ?
対象種と撮り方のコツ
オニカサゴ属の中でも特に見分けるのが困難な
オニカサゴ、イヌカサゴ、ヒュウガカサゴ、ミミトゲオニカサゴ、ウルマカサゴ、トウヨウウルマカサゴ、オオウルマカサゴ
の7種を対象に見分け方を解説します。
ここでポイントとなってくるのが同定に必要な要素を拾える適切な写真を撮ることです。
くまなく撮れれば撮れるだけよいですが、注目すべきは
①真横から全身、②背鰭の長さ、③胸鰭軟条数、④吻 (顔周り)、⑤後頭窩 (頭の後ろ側の窪み) の隆起
の5点です。できるだけ全て撮るようにしましょう!
⑤の後頭窩の隆起は真上からよりも少し角度を付けた方が分かりやすいです。隆起の深さが分かるように撮れればOKです。
ちなみに④の吻はイヌカサゴ、⑤の後頭窩の隆起はヒュウガカサゴやミミトゲオニカサゴを見分けるのに用います。
ざっくり分類
まずはいくつかの特徴の組み合わせでざっくり3つのグループに分類しましょう。
胸鰭軟条数は変異があるので注意が必要です。
背鰭最長が第4-5棘、眼が1/4しか突出しない (スマートな顔)、胸鰭軟条18 → オニカサゴ or イヌカサゴ
背鰭最長が第3棘、眼が1/2突出する&吻が短い (カエル顔)、胸鰭軟条17 → ヒュウガカサゴ or ミミトゲオニカサゴ
背鰭最長が第3棘、眼が1/2突出する&吻が長い、胸鰭軟条18以上 → ウルマカサゴ or トウヨウウルマカサゴ or オオウルマカサゴ
それではこれから1種ずつ詳しく見ていきます。
オニカサゴ
7種の中で一番わかりやすいのが無印のオニカサゴです。
ポイントは体側や各鰭に必ず黒色点があることです。
背鰭最長が第4-5棘なこと、眼が1/4しか突出しない (スマートな顔) こと、胸鰭軟条18なことも特徴です (イヌカサゴも同様)。
また紫と褐色の体色の個体が稀にいますがそちらは本種に特有らしいです。
イヌカサゴ
ポイントは涙骨の隆起の先端が露出し犬歯のようになっていることで、この特徴があればイヌカサゴに確定できます。(※上記写真は無印オニカサゴ)
このために④の吻の写真が必要なんですね。
背鰭最長が第4-5棘なこと、眼が1/4しか突出しない (スマートな顔) こと、胸鰭軟条18なことも特徴です (イヌカサゴも同様)。
また、色彩にあまり変異がなく、体色は一様に褐色&灰色〜黒色、もしくは腹鰭・胸部付近だけ橙色になります (ミミトゲオニカサゴも同様)。
オニカサゴやウルマカサゴのように全体的に赤い個体は滅多にいないようです。
ヒュウガカサゴ
ポイントは後頭窩 (頭の後ろ側の窪み) の隆起が深く、前縁の隆起が直線or前方 (頭側) に湾曲することです。
ヒュウガカサゴはこの四方を隆起に囲まれた凹み (名付けて"ヒュウガゾーン") があることで他種と見分けられるので、⑤の後頭窩の隆起の写真が必要なんですね。
さらに背鰭最長が第3棘、眼が1/2突出する&吻が短い (カエル顔)、胸鰭軟条17なことも特徴です。
ちなみにミミトゲオニカサゴにも後頭窩が凹む個体がいますが、前縁の隆起は後方に湾入し後縁の隆起は不明瞭なようです。
ミミトゲオニカサゴ
ポイントは眼後棘の内側、耳棘の前に通常1本トゲがあることで他種と見分けられます (上図赤矢印、※写真はヒュウガカサゴ) 。
他の種でもトゲがあることがあるようですが通常左右非対称で片側にしかないようです。
さらに後頭窩の前縁の隆起が後方 (尾鰭側) に湾入し、後縁の隆起は不明瞭なことも特徴です (赤線)。
背鰭最長が第3棘、眼が1/2突出する&吻が短い (カエル顔)、胸鰭軟条17なことも特徴になります。
ウルマカサゴ
吻が長く、胸鰭軟条数が多い (通常は19) ことが特徴です。
体色は変異に富みますが、全体的に赤っぽい個体が多いです。
背鰭最長が第3棘なこと、眼が1/2突出することも特徴です (トウヨウウルマカサゴ、オオウルマカサゴも同様)。
トウヨウウルマカサゴ
ポイントは見た目が派手なこと、背鰭第4棘以降の棘は急激に短くなること、 吻がオニカサゴ属の中で最長なことです。
地色が黒いため黄色や赤色の模様とのコントラストが目立ちます。
眼の下と胸鰭の上付近には青白い綺麗な斑紋があり、背鰭軟条部には黄色と黒からなる不定形の2斑紋があります。
さらに幼魚はとても長い眼上皮弁があることが特徴で、成魚になってもある程度残ります。
背鰭最長が第3棘、眼が1/2突出する、胸鰭軟条18以上なことも特徴です。
オオウルマカサゴ
ポイントは後頭窩は極めて浅く、後縁の隆起が無くなだらかなことで、この特徴があればオオウルマカサゴに確定できます。
色彩も特徴的で、顎の下から尾柄まで腹側がオレンジ色で、顔に細かい網目模様が入っています。
背鰭最長が第3棘、眼が1/2突出する&吻が長い、胸鰭軟条18以上なことも特徴です。
生息環境による分類
参考程度ですが生息環境によってもある程度検討をつけることができます。
岩礁・珊瑚礁 → オニカサゴ、ミミトゲオニカサゴ、ウルマカサゴ、トウヨウウルマカサゴ、オオウルマカサゴ
砂泥底 → イヌカサゴ、ヒュウガカサゴ
またオニカサゴは温帯種で南限は種子島なので琉球列島のものはオニカサゴ以外の種になります。
まとめ
いかがだったでしょうか?
これで皆さんもオニカサゴマスターですね。
僕とどっちが早く7種コンプリートできるか勝負しましょう。
ちなみに2024/6/6現在、イヌカサゴ、トウヨウウルマカサゴ、オオウルマカサゴはまだ見たことがないことになっています。
最後になりますが、快くオニカサゴ属の同定方法を教えてくださった@yuma_sakanaさんに最大の感謝を申し上げます。